大会長挨拶
皆さま、ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。平素は大変お世話になり、厚く御礼申し上げます。
この度、日本病院薬剤師会東海ブロック・日本薬学会東海支部合同学術大会2026を、「薬学の未来をつむぐ ― 基礎と臨床の協働から ―」をテーマに開催する運びとなりました。謹んでご案内申し上げますとともに、本学会開催にあたり一言ご挨拶申し上げます。
急速な医療の高度化と個別化が進む現代において、薬学は今まさに、大きな変革の時代を迎えております。医薬品の開発技術は日進月歩で進化し、ゲノム情報やビッグデータを活用した創薬研究や、AIを応用した薬剤設計、さらには再生医療や分子標的治療薬の臨床応用など、従来の枠を超えた新たな薬学的アプローチが次々と実現されています。
しかし、これら最先端の基礎研究の成果が真に患者のもとに届き、医療の質の向上に結びつくためには、臨床現場との連携、すなわち「基礎と臨床の協働」が不可欠です。基礎研究者が見出した知見を臨床へと橋渡しし、逆に臨床でのニーズや課題を基礎研究へとフィードバックしていく。この双方向の連携こそが、今後の薬学の発展を支える大きな柱となるのです。特に薬剤師の役割は、医療チームの一員としてますます重要性を増しています。これまでの調剤・服薬指導にとどまらず、薬物療法の最適化や患者個別性の理解、副作用の予測と回避、アドヒアランス向上への介入など、臨床薬学の実践を通じた医療貢献の幅は格段に広がっています。こうした臨床の現場から得られる実践的知見は、基礎薬学に新たな問いをもたらし、次世代の研究テーマを育む源泉にもなり得ます。
また、医療制度や社会環境の変化に伴い、薬学が担う役割も質的転換を迫られています。高齢化社会における地域包括ケアの中で、薬剤師がどのように他職種と連携し、患者の生活を支えていくか。また、医薬品の供給課題や後発医薬品・バイオシミラーの適正使用、薬物療法の費用対効果といった課題にも、基礎・臨床の視点から総合的に取り組んでいく必要があります。
具体的には、基礎・臨床をつなぐセッションの充実、若手研究者の発表機会の拡充、医療現場での課題解決に資する研究の紹介などを通じて、薬学全体の融合的発展を目指します。
本学会が、基礎と臨床の間を架橋し、研究と実践を結び付ける場となることを強く期待しております。そして、このテーマのもとに集う皆様お一人おひとりの対話と協働こそが、次代の薬学の形を描き出していく原動力となると確信しております。
日本病院薬剤師会東海ブロック・日本薬学会東海支部合同学術大会2026
大会長 亀井 浩行
名城大学薬学部 教授
日本薬学会東海支部 支部長



